【官能小説】ちょっとアブナイお仕事。
2021/09/20 16:37
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「か、神崎さん……」
奈々子は体を起こすと、足下にいる神崎の腕に手を伸ばし、服の袖をつかんだ。
息を荒くし、切ない目をした奈々子と、驚いたような顔をした神崎の視線がぶつかる。
「柏木さん……」
神崎は身を乗り出し、奈々子の方へ寄ってきた。
このまま二人は抱き合うかに思えた。
ところが、神崎は突然、ローターのスイッチを切り、身を引いた。
「う、うん、ここまでにしよう」
そう言うと、奈々子にくるりと背を向け、メモをまとめ始めた。
奈々子は、神崎の袖から外れ、宙に浮いた腕をゆっくりと下ろした。
息を整えながら、徐々に冷静さを取り戻す。
どうしよう……
あんなに激しく感じて、しかも、神崎さんを求める素振りまで見せてしまった……
仕事だったのに……!
背を向けたまま何も言わない神崎を見て、奈々子はショックだった。
きっと、呆れてるんだ……
奈々子は恥ずかしくて、悲しくて、たまらなくなった。
「神崎さん、あの……すいませんでした、あんな風になってしまって……」
奈々子が言うと、神崎は背を向けたまま言った。
「そんな、君が謝る事なんかないんだ、違うんだ……」
神崎は落ち着きのない様子でしばらく考えていたが、奈々子の方に向き直って言った。
「僕がいけないんだ、途中で変な気持ちになって……それでやっと気付いたんだ」
「変な気持ち……?」
「ああ……そうさ。僕は……事もあろうに、君が欲しくてたまらなくなってしまったんだ……くそっ」
「神崎さん……」
「そもそも、こんな事間違ってた。僕は仕事に夢中になりすぎて、常識を失ってたよ。本当にバカだった。君の気持ちも考えずに……本当にごめん。君にひどい事をさせてしまった……」
神崎は頭を抱え、心底落ち込んだ様子で謝っていたが、奈々子はうれしくて飛び上がりそうだった。
わたしが欲しくなったと……彼はそう言ったのだ!
「結局……わたしは全然役に立てなかったんでしょうか」
奈々子が聞くと、神崎は首を振った。
「いや、そんなことはないよ。ひどい目にあわせちゃったけど、すごく、いいデータがとれたと思う。すごく役に立つ……」
「それなら、よかったです」
奈々子は笑顔で言ったが、神崎の顔は青ざめていた。
「でも、こんな事させて、本当に……僕は、許されない事をしてしまった……」
「……そうかもしれません。普通なら。でも、わたしは怒ってないし、全然大丈夫ですよ。だから、もう気にしないでください」
奈々子は落ち込む神崎を必死に励ました。
しかし、神崎の顔色は一向に良くならない。
奈々子はしばらく考えていたが、やがて、勇気を出して口を開いた。
「神崎さん」
神崎は顔を上げた。
「そんなに落ち込むなら、わたしに今日の償いをしてください」
「償い……?」
奈々子はうなずいて、続けた。
「はい。償ってくれたら、わたしは神崎さんを許します。って、すでに怒ってないんですけど。まぁ……そうすれば気が晴れるんじゃありませんか?」
「うん、そうかもしれない。はぁ……君にそこまで気をつかわせてしまう自分が情けない……」
「ちょっと……しっかりしてください。じゃあ、償い、してくれるんですね?」
「ああ、できる事ならなんでもするよ」
神崎が答えると、奈々子はいたずらっぽく笑って言った。
「じゃあ今日は、わたしのお願い、なんでも聞いてください。無理なお願いはしませんから」
「……よし、わかった」
神崎は素直にうなずいた。
食事か、買い物か……そんなところだろうと思っていたのだ。
しかし、奈々子は神崎の予想を遥かに超えたお願いをしたのだった。
「じゃあ……まずは、キス」
「えっ?」
「キスしてください、今すぐ」
そう言うと、奈々子は四つん這いになって、床に座っている神崎に顔を近づけた。
「ダメですか……?」
「でっ、でも……」
「嫌なんですか……」
奈々子が言うと、神崎は小さく息を吐いて、奈々子にキスをした。
「ん……」
軽いキスはやがて、激しく舌を絡め合う濃厚なキスに変わり、二人は自然と抱き合った。
「さっきの質問だけど……」
キスの途中で神崎に言われ、奈々子は唇を離した。
「嫌なんかじゃない。ずっと、こうしたかったんだ」
神崎はそう言うと、奈々子の唇に再びキスをした。
神崎の顔には笑顔が戻っている。
奈々子はにっこり笑ってキスを返し、神崎をぎゅっと抱きしめた。
「次のお願い……いいですか?」
「もちろん」
神崎も奈々子をぎゅっと抱きしめる。
「こんな事言うのはすごく恥ずかしいんですけど……おっぱいもさわってほしいんです……」
「なるほど」
神崎はすぐに奈々子の服とブラジャーををまくり上げ、柔らかな乳房を揉んだ。
「ああ……ん……」
奈々子が快感と喜びの混じった声をあげると、神崎は乳首を優しくつまんで、こねるように刺激した。
「あっ、あん、すごい……うっ……うれしい……ずっと……さわってほしかったのっ……」
奈々子は切なげに喘いだ。
「か、神崎さん……んんっ……あのっ……おち○ちん、入れてくれる……?」
奈々子が言うと、神崎は笑顔で言った。
「おおせの通りに」
神崎は奈々子を毛布の上に寝かせると、ズボンを下ろした。
そして、固く大きくなったものを、ぐっしょりと濡れた奈々子の陰部に押しあてる。
「いくよ……」
「はい」
奈々子がうなずくと、神崎は一気に、それを奈々子の奥深くまでうずめた。
「あぁっ……神崎さん……すごく……すごく……気持ちいい」
「僕もだ……すごく……いいよ……」
神崎が腰を動かすと、奈々子はさらなる快感に飲み込まれ、激しく喘いだ。
「あぁっ……あん……うっ、あん……神崎さ……ん……」
「気持ちいい?」
「はい……」
「なるほど」
神崎はそう言うと、わざとらしくメモをとってみせた。
「ちょっと……」
奈々子は笑った。
神崎も笑うと、メモを放り出し、さらに腰を激しく動かした。
膣の奥を激しく突かれ、奈々子は快感で頭が真っ白になった。
「あっ、あっ、もう……すごく……んっ……もう……ダメ……イッちゃうよぉ……」
「いいよ。イッてごらん」
「あっ、んんっ、イクッ、あん、ああっ──!」
奈々子は神崎の体を強く抱きしめながら、体を痙攣させ、仰け反った。
「はぁ……はぁ……」
「だいじょうぶ?」
「はい……」
神崎は奈々子の横に移動し、奈々子の乳房を撫でた。
「あぁ……神崎さん……そんなことしたら……気持ちいい……」
「うん」
「またしたくなっちゃいます」
「いいよ」
「えへへ……うれしい」
そう言って、奈々子は神崎に抱きついた。
肩を優しく抱いてくれる神崎の手が温かい。
ずっとこうしていたかった。
でも……
奈々子の表情が曇る。
彼は、仕事の途中でちょっと変な気持ちになっただけ。
これは恋愛ではないのだ……
奈々子は意を決し、口を開いた。
「えっと……そろそろ帰らなきゃですよね……あの……時間とらせちゃってすいませんでした。もう何もお願いしないから、安心してくださいね」
泣いてしまいそうなのを必死でこらえ、明るく言って、起き上がる。
「あ、あぁ……」
神崎も起き上がり、二人は黙って服を直した。
「でも……柏木さん」
神崎が口を開いた。
「君のためなら、これからも、どんなお願いだって聞いてあげたいよ」
緊張しているのか、声が震えている。
神崎は奈々子の目をじっと見つめて言った。
「柏木さん……僕と、付き合ってもらえないかな」
奈々子は息をのんだ。
大きく見開いた目から、涙が溢れ出す。
それを見た神崎はあわてて言った。
「あっ、ごめん!そんなの、無理だよね。ひどい事したばかりなのに……また傷つけるような事……ほんと、ごめん!」
奈々子はかぶりを振った。
「いえ、違うんです、すごく、すごく、うれしくて……うれしいです、神崎さん!」
そして、がばっと神崎に抱きついた。
「ほ、ほんとに?」
「ほんとです」
「や、やった……!」
神崎もぎゅっと奈々子を抱きしめる。
「あんなことした後に告白なんて……順番が逆になっちゃったね」
奈々子の頬についた涙を拭いながら、神崎が言った。
「うふふ……そうですね」
奈々子が笑う。
「そうだ、また今度、新しいオモチャの実験に付き合ってもらえるかな」
「えへへ……もちろん、いいですよ!」
「あ、でも、他の奴に言われたら、絶対に、絶対に、断るように」
「了解です」
二人は笑いながら、くしゃくしゃになった毛布の上で、いつまでも抱き合っていた。